解体工事に必要な資格
住宅工事の中には、リフォーム工事や塗装工事など、業者が何の資格を有さなくても行える工事もありますが、解体工事を行うには公的な許認可が必要です。千葉の優良業者紹介サービス「ちいき新聞の解体」が、解体工事に必要な許認可について説明します。
まとめると…
- 解体工事を行うには「解体工事業登録」もしくは「建設業許可」が必要。無許可の業者には絶対に依頼しないように。
- 解体工事業登録の場合は500万円以下の工事、それを超える場合は建設業許可が必要。
- 登録・許可を得るには、行政処分中でないことや暴力団員でないこと、実務経験などの条件を満たしている必要があり、制度によって一定の消費者保護がなされていると言える。
解体工事に必要な2つの許認可とその違い
解体工事を行うには、「解体工事業登録」もしくは「建設業許可」が必要です。無許可の業者には絶対にお願いしてはいけません。2つの許認可の大きな違いは請け負える工事の規模です。解体工事業登録では、工事費用500万円未満の工事しか請け負うことができません。500万円以上の工事の場合は建設業の許可が必要です。ただし、一般の戸建て一軒家の解体工事では、500万円以上の費用がかかることはほぼないので、建設業許可がなくても解体工事業登録のみで足りるでしょう。建設業許可を得ている業者の中には、商業施設や公共施設の解体工事など、比較的大規模の工事をメインで行っており、戸建て住宅の解体については下請け業者に委託している業者もあります。
解体工事業登録
解体工事業登録を行っている業者は500万円未満の解体工事を請け負うことができます。工事現場のある都道府県(知事)への申請・登録が必要になります。例えば、東京都と千葉県で解体工事を行う場合は両都県(知事)に対して申請・登録が必要です。なお、その工事を下請け業者に委託する場合は、元請け・下請け業者ともにこの登録が必要になります。有効期間は5年間です。この解体工事業の登録制度は、建設や解体の過程で発生する廃棄物の分別やリサイクルを義務づけた通称「建設リサイクル法」の施行(2002年)に伴って設けられました。登録には、行政処分中でないことや暴力団員でないなどの規定を満たしていることに加え、以下の(1)~(5)のいずれかの条件を満たした「技術管理者」を選任する必要があります。
技術管理者の条件(以下いずれか)
- 解体工事の実務経験者。大学及び高等専門学校で土木学科等を修めて卒業した場合は2年、高校及び中高一貫校で土木学科等を修めて卒業した場合は4年、それ以外は8年以上の実務経験を有している。
- 有資格者。建設機械施工技士、土木施工管理技士、建築施工管理技士、建築士、とびもしくはとび工の技能検定、技術士(建設部門)、いずれかの資格を有している。
- 解体工事の実務経験に加え、国土交通大臣の登録を受けた「登録解体工事講習」を受けた者。大学及び高等専門学校で土木学科等を修めて卒業した場合は1年、高校及び中高一貫校で土木学科等を修めて卒業した場合は3年、それ以外は7年以上の実務経験を有している。
- 国土交通大臣の登録を受けた試験に合格した者。その試験とは(社)全国解体工事業団体連合会が実施する「解体工事施工技士の試験」です。受験には学歴によって1年6ヶ月〜8年の実務経験が必要になります。1年に1度実施されており、合格率は56.2%(2019年までに実施された全26回の平均)です。
- 上記(1)〜(4)と同等以上の知識及び経験を有すると認定した者。
建設業許可
建設業許可を得ている業者は500万円未満の解体工事に限らず、500万円以上の解体工事も請け負うことができます。建設業許可は、建設業法で定められた「建設工事を請け負うための許可」で、塗装工事業や電気工事業、造園工事業など全部で29種類あり、解体工事を行うためには建設業許可の中でも「解体工事業」の許可が必要です*。営業所が複数の都道府県にある場合は国土交通大臣から、それ以外の場合は都道府県知事から許可を得なければなりません。許可を得るには、規定以上の財産を有することなどに加え、以下に挙げる条件を満たした、建設業の経営業務を担える「管理責任者」と、解体工事の技術能力を持つ「専任技術者」が必要になります。
管理責任者の条件(以下いずれか)
- 通算5年以上の解体工事業での経営経験
- 通算6年以上の他の建設工事業での経営経験
専任技術者の条件(以下いずれか)
- 有資格者。土木施工管理技士、建築施工管理技士、建築施工管理技士、技術士 (建設部門、総合技術監理部門)、解体工事施工技士、技能検定 とび、いずれかの資格を有している。
- 学歴及び実務経験を有する者。大卒または高度専門士/専門学校卒の専門士の場合は3年、高卒または専門学校卒の場合は5年以上の解体工事の実務経験を有している。
- 解体工事の実務経験者。通算10年以上の解体工事の実務経年を有している。
- 解体及びその他工事の実務経験者。土木工事、建築工事、とび土木、いずれかの実務経験と解体工事の実務経験が12年以上あり、そのうち解体工事の実務経験が8年以上ある。
* 建設業許可制度において、解体工事は「とび土工コンクリート工事業」として扱われてきましたが、2016年6月にそこから分離され、「解体工事業」が新設されました。現在、解体工事には「解体工事業」の建設業許可が必要となっています。
その他の資格
解体工事を行うためには既に説明した「解体工事業登録」もしくは「建設業許可」があれば足ります。ただし、解体に関連する資格は、クレーン運転士のような重機に関わる資格なども含めると他に数多く存在します。以下では、必須ではないものの解体工事に関連のある比較的重要な資格や許認可を紹介します。
産業廃棄物収集運搬業許可
解体工事が行われると、がれきやコンクリート片など、必ず排出物(産業廃棄物)が発生します。この産業廃棄物を処理場/処分場へ運搬できるのは産業廃棄物収集運搬業の許可を得ている業者のみです。仮に解体業者がこの許可を得ていない場合はこの業務の許可を得ている他社へと委託する必要が出てきます。
産業廃棄物処分業許可
解体工事で発生した産業廃棄物は処理場/処分場に運ばれ、処理/処分されます。この処理/処分を行うには産業廃棄物処理業の許可が必要です。処理/処分施設を持っていなければ許可を得られず、多くの解体工事業者は処理/処分施設や許可を持っていません。よって、施設や許可を有する他社に処理/処分を委託しています。ただ、中には施設や許可を有する解体業者も存在しています。
一般廃棄物収集運搬業許可
解体工事において、該当物件内にタンスやベッド、冷蔵庫といった家具/家電が残っている場合が多くあり、解体業者にこの残置物の処分も含めて依頼される方も多くいらっしゃいます。これは解体工事で発生するがれきやコンクリート片などの排出物(産業廃棄物)とは区分けされ、一般廃棄物として扱われます。そして、この一般廃棄物を処分場まで運ぶには一般廃棄物収集運搬業の許可が必要になります(産業廃棄物収集運搬業許可では不可)。この許可を有する解体業者はとても少ないですが、仮にこの許可を得ていれば自社での一貫施工が可能となるため、より効率的です。
石綿作業主任者・特別管理産業廃棄物管理責任者
健康被害のあるアスベストを含む建物の解体工事に必要な資格です。工事を行うには、この資格の取得者が在籍しているとともに、作業員全員が石綿取り扱い特別教育を受けている必要もあります。アスベストの適切な処理をしないと最悪の場合、施主にも責任が及ぶ可能性があります。そして、全ての解体業者がアスベストを含む建物の解体に必要な条件を満たしているわけではありません。必ず条件を満たしている業者に工事を任せましょう。
最後に:必ず許認可が必要とはいえ解体業者は千差万別
解体工事には必ず許認可が必要という点で、国家制度によって一定の消費者保護はなされていると言えるでしょう。しかし、許認可を受けている業者の中にも、良質な業者や悪質な業者、戸建て住宅に向いている業者やそうでない業者が存在していて解体業者は「ピンキリ」です。中には許認可が取り消されているのに法律に反して解体工事を行っている業者も存在します。信頼できる業者を見つけられるかが、解体工事成功の鍵となるでしょう。